「もう一回」

ゆっちゅはいつ頃から「もう一回」という言葉を使いはじめたのだろう。 興味を感じると「もう一回」と言って再現することを求めてくる。 その際、ゆっちゅは再現可能なものとそうでないものとの区別が不思議とできているのだ。 さらに、それがゆっちゅ自身で…

走ってダイブ

おしゃべりが止まり、身じろぎもせず、目の焦点は結ばれることなく中空にとどまったままになっているといったことが、ゆっちゅにはときどきある。 耳は外界の音を受け入れてはいるが、特定の音を聞き取ろうとしている様子ではない。 すべてが止まっていると…

アリの冬眠

文化的なものへの関心が高まるほど、自然から遠ざかる度合いが大きくなる。 それは当然のことなのであろう。 聞き分けが良くなるということは、人の世の約束ごとに順応して行くということだ。 おしゃべりを覚え、おとなのおしゃべりから世界の見方を学びとる…

ルーティン

ゆっちゅは近ごろルーティンにこだわっているようだ。 支援センターに行くと、下足置き場に座って自分の靴を「とって」と言いくつ箱に入れるように指示し、名前が書いてある名札(子供の名前がわかるようにつける決まりになっている)をつけるように自分の胸を…

「楽しみぃー」

ジィの顔を見てにっこり笑ったり、両目を強くつぶって愛想笑いをしたり、かと思えば鋭いまなざしでジィのこころを読み取ろうしたりする一個の人としてのゆっちゅがいる。 生のさまざまな刺激に対して、それぞれ異なった反応しながら複雑な感情のパターンを人…

自己中心の生活

ゆっちゅのわがままが強まってきたことと、ゆっちゅの行動が外向的な傾向から内向的なものに変化してきたことは連動しているように思われる。 外向的だったときは、さんぽの迎えに行くジィを待ちきれない様子で玄関のドアを開けるや飛び出さんばかりに外に出…

家で遊ぶ

ゆっちゅは近ごろ遠くへ行くことより家の周辺をめぐり歩くことを好む。 さんぽに出るのを拒み家で遊ぼうと主張したり、ゆっちゅが暮らしているアパートの一室の外周で遊ぶのが増えてきた。 さんぽするにしても道の選択に迷いがなく、目的は河原でサッカーを…

ボクの足

最近のゆっちゅの歩き方に特徴的な歩き方がある。 足を踏み出すとき、つま先を地にこすりつけるようにして地面のデコボコをつま先でなぞって、引っかかってバランスが崩れても予想していたかのように態勢を立て直すのを楽しんで歩くという歩き方である。 予…

予想する能力

週のうち五、六日は、同じことを繰り返していることが多い。 さんぽや食事の世話、入浴、家への送り届けなどだ。 例えば入浴中には「右足洗います、12345、ハイ次は反対の足、12345、ハイ、左の手って、12345、・・・ハイ、次はオシリ・・・」と洗う個所を言…

言葉の抑揚

「ガス ボン ベー」は、ゆっちゅのガスポンベの言いである。 「ガス」と「ボン」と「べー」の間にそれぞれひと呼吸間を取り、そして「ガス」より「ボン」が強く「べー」は「ボン」よりさらに強く強調される。 さんぽ中に家々のガスポンベを見つけると、得意…

ボディ・ランゲージ

近ごろは30分もかからないで、自分の足で1kmの道のりをほぼ走りきるほどになった。 しかも、ゆっちゅが好む道は、古くからある道で随所に道祖神が祀られていて、道幅も狭く両側に家々が立ち並んでいる。 その道は山すそを横切るようにつけられていて、昔か…

パトカーに乗る

その日はゆっちゅのさんぽコースのひとつで、隣町にある高校の校内マラソン大会が行われていた。 そのための交通整理にパトカーが一台来ていた。 近くで見ようと「パコカー パコカー」と勇んでやってきたゆっちゅは赤い警告ランプが動き回るのを興奮して見て…

童心

風が少しあったが、陽射しに力があったので、ゆっちゅを連れてばあばと三人でローカル線で山間にある鉄道公園に遊びにでかけた。 蒸気機関車が一台常設されており、定期的に5〜6m前後汽笛を鳴らして走行させ余命を保っている。 機関車が動く日は、多くの大人…

節分

さんぽコースにある神社で節分の豆まきがあった。 豆まきが始まって、ビニール袋に小分けにされた豆をパパが拾ったものを、ゆっちゅはまた撒いた。 大勢の人が豆の小袋を撒いて、大勢の人が争って拾う様を見てゆっちゅはマネをした。 自分で放り投げた豆袋を…

一枚の写真

ゆっちゅはさまざまな経験をするなかで自分自身の習慣化した行為を意識するようになり、徐々に自分が意識を持った主体であることに気づきはじめたようだ。 それが一枚の写真から見て取れる。 そこに写っているゆっちゅは、目が座り落ち着いた表情を見せてい…

サッカー遊びとボールを使った研究

ゆっちゅと初めてサッカーをした。 いいセンスを持っていると思った。 パパからボールの蹴り方は習っているらしい。 まだ左足のトーキック、つま先でける蹴り方だけだが、かなりの確率でヒットしていた。 しかし、なんと言ってもボールに向かってゆく野生的…

感情のパターン

機嫌がよくなかったゆっちゅは、大好きな「赤いバス」を投げ捨て、それを拾って自分に渡せと、ジィをゆび指して命令?した。 取って渡すと、それを今度はジィに向けて投げた。 また、ジィをゆび指して取ってよこせと命じた。 ジィは命令を無視し、ゆっちゅの…

一枚のイチョウの葉

おもちゃ箱のなかにあったイチョウの葉っぱを摘みとって、それをジィに手渡しながら柏手を打ち腰を折って「パチパチ」と言った。 それは神様を表すゆっちゅのボディ・ランゲージなのである。 それは昨年の冬の訪れも間近な、空が青く晴れ渡った日だった。 時…

「おっしまい」

映画用語としてよく耳にするシークエンスという言葉がある。 物語上のつながりのある一連の断片のことを意味する言葉だ。 たぶんゆっちゅは「おしまい」という言葉を、新幹線のDVDを見ていて覚えたものと思われる。 食事のとき、そのDVDをよく見ていたことも…

デジタル的な知②

「あっちも」「こっちも」 車のナンバープレートのひらがなを読む習慣ができてから、「て」でも「と」でも、同じ文字のナンバープレートの車が並んでいたりすると「こっちも『て』」と、助詞の「も」を使うようになった。 また、アパートの駐車場にはたいて…

デジタル的な知①

「もしかして」と言いながら「あった」と、在ることを想定して使っているところが、ゆっちゅらしいのだが、「たしかに」「やっぱり」「まず」などの副詞系の言葉をよく使うようになった。 もちろん、ゆっちゅの周囲にいるコミュニケーションをよくとる大人た…

情緒的人間

自然は日々変化しながらも一定の状態を保ち続ける最適化の原理にしたがっているのに対し、ヒトは大脳が巨大化したために、文化という自然とは異なる特有の環境をつくりはじめた。 そしてそこでは、いつしか最大化が支配原理となっていった。 近ごろゆっちゅ…

自転車の研究

ゆっちゅが自転車の仕組みに興味を示した。 はじめはベルや変速ギアのスイッチであった。 続いてペダルをこぐジィの太ももに関心が移っていった。 その日は自転車に乗るのを拒否して土いじりをし出した。 ゆっちゅがサイクリングに使う自転車はジィの家の庭…

さんぽコース

ゆっちゅと日々生活を共にしていると、ひとが成長するには実に長い時間が過ぎ去る必要があることが実感される。 まさしく悠久の時の流れのなかで生きて、巧まず焦ることもなく自然のままに過ごしているゆっちゅの「生」にふれるからだろう。 ゆっちゅは、自…

「おなじ かたち」

ミニカーの都営バスやJRバス、消防車、乗用車などを二つ以上並べてそう言ったり、ミニカーが入っていた箱と見比べて「おなじ かたち」と言う。 後者の使い方は適切だが、前者については間違っているように思うのだが、「かたち」という言葉はゆっちゅにとっ…

砂山

原子は渦巻きの姿をしているとも考えられるという。 絡まりあって原子は分子を作り、さらに高次のつながりを持ち、あらゆる物が形づくられて行く。 また、動植物は物質が通過して行くシステムだという。 システムにおいては、構成されている一部分に情報が入…

知る

生をうけてゆっちゅが最初に感じたものは母の胎内で奏でられていたリズムであろう。 地球が自転し、昼と夜が交替する明暗のリズム、四季が織りなす色彩のリズム、自然界や人間生活の音など世界はリズムとしてひとつのものとして、ゆっちゅに語りかけてきたに…

郵便車のマークがついてる

ミニカーの郵便車にマークが付いているのを、大好きな叔母ちゃんに教えてもらったゆっちゅは、口まねで「ゆうびんしゃのマークがついてる」。 すかさず傍らにあった、ゆっちゅの大好きなごみ収集車をさして、叔母ちゃんが「清掃車のマークがついてる」と。 …

もっと高く

山に入った日、ジィのジョギングコースを走るゆっちゅの姿は印象的だった。 傾斜角30度ほどののぼり坂に向かって、手と足を交互に構え腰を落として、ジィを振り返り「よーい」の号令がかかった。 すかさず「ドン」と言って駆けだすゆっちゅの後ろからつい…

山登り

踏切を越えると、正面に隧道のひとつが見える。 「トンネル」と、その日のゆっちゅは山に入る気満々だった。 トンネルは沢に沿ってできている。 暗がりはまだ怖いのか、トンネル内は抱っこである。 トンネルを抜けて明るい場所に出ると、地面に降り立って枯…