ゆっちゅは、神様がこわい

ジィの家には、神棚がある。ゆっちゅは、それをゆび指して、何か訴えて、柏手を打つしぐさをする。

堅牢地神」と彫られた地面の神、とゆっちゅとジィの間では呼んでいるだけだが、それと道祖神が道端のあちこちに見られる土地柄なので、さんぽの途中にそれを見つけると、ゆっちゅは柏手を打ち膝を少し折ってお辞儀するしぐさをする。

 

そんなことを、ゆっちゅはいつ頃からし始めたのかは確かなことは分からない。

一番初めは、家の神棚で何かを学んだのかもしれない。

ゆっちゅがよくさんぽで立ち寄る神社は、ママが鳥居の前を通るとき、必ず手を合わせお辞儀するので、ゆっちゅは、それを見て覚えたのだろうか。

ゆっちゅが、まだ神様に畏怖を感じなかったころに、ジィもその神社でお願いごとをするところを見せたことはよくある。

「ゆっちゅが元気でお利口でありますように」と。

 

その神社の前に来ると、最初の二段の石段を、ゆっちゅはジィに手を引かせて上がり、鳥居の前で柏手を打ちお辞儀する。

次の五段の石段は段差が小さいこともあり、近頃は自分で上がる。

そして20メートルほどの石の参道を中ほどまでは何の迷いもなく進むのだが、途中で止まり、柏手をし、お辞儀をすると参道をはずれ、境内に敷かれた砂利で遊びだす。

拝殿に上がる石段には近づこうとしない。

手を引いて近づくと緊張し、ときに抵抗する。抱っこでも、お賽銭箱まで近づくと、身をよじって遠ざかろうとする。

鈴を鳴らそうものなら、身を固くして畏まってしまう。

 

裏手にある宝物庫のようなものや神楽殿や祠など、注連縄が張ってある建物には恐れる様子は見せない。注連縄が張ってあるのは神様のお家と心得ており、柏手をし、お辞儀して近づき、建物に触れさえする。

 

宮崎駿の『となりのトトロ』でメイとサツキがトトロからもらったどんぐりを播いて、早く芽が出るように祈るシーンがある。

手を合わせ身を屈め、合わせた手を上空に向かって突き上げ、同時にジャンプするという動作なのだが、ゆっちゅも時々見せる。気分が高揚している時だ。

 

じぶんから拝殿に一歩近づけたと感じたとき、その祈りのポーズを見せることがある。

ゆっちゅは、そのとき、ある領域に入ったという意識もつのだろうか。