情動
さんぽ先でときどき合う、ゆっちゅと1~2カ月違いの女の子がいる。
その子がお父さんと一緒にいた。
ゆっちゅが抱っこから降りて近づいて行った。ところが、その子はジィの方に真っ直ぐに向かってきてジィに抱きついてきた。
ジィはその子を抱きあげてゆっちゅの方を見た。
ゆっちゅは、すぐさま近くの階段に向かって行った。
ジィは、すぐに後を追った。
ゆっちゅは、手すりに片手だけつかまりながら、ひとりで16段ある石段を上まで登った。
ゆっちゅのなかで、感情が動いたのを、ジィは感じた。
ジィは、登り切ったゆっちゅに、「がんばったな」と褒めた。
ゆっちゅを抱っこして、つぎに向かった先は、田んぼだ。
この辺りで、他に田んぼを見かけることはほとんどなく、そこだけといってよかった。
これを活用しない手はない。ゆっちゅの絶好の学習の場だ。
田植えの後、二、三度のぞき込んでみたが、ミズスマシを見かけるぐらいで、ゆっちゅが興味を示しそうなものはなかった。
そのときは、これまでとは違うところをのぞいた。いました、いました、オタマジャクシがいたのです。1~2mmの、とってもちっちゃなオタマジャクシが。
ゆっちゅが見て取れるようにと、ジィが水面をちよっと指で突くと、オタマジャクシは驚いたように泳ぎまわった。
ゆっちゅも、まねして田んぼに手を入れた。手に浮草のちっちゃな葉っぱが付いたのを気にしていた。果たして、ゆっちゅはオタマジャクシに気づいたのだろうか。
それから河川敷に行って、ゆっちゅは、日々自由度を増していく身体機能を味わうように動き回った。
運動がひと段落したところで、川岸を指して「イシー」と言ったので、石投げしたいのだろうと思い、足場の悪い、勢いよくヨシが伸びはじめた川原を進んでいくと、一匹のシオカラトンボが飛んでいた。
帰りがけにもいたのだが、ゆっちゅは見て取れたのだろうか。