「右脳的人間」
このところ、ゆっちゅの関心の大きいものに、電柱と並んで窓が挙げられる。
「マド」という言葉は、ゆっちゅの口から出て来ないが、窓それに加えて扉も、見つけ次第にゆびを指して音声言語を催促する。
そもそも、窓がゆっちゅの関心を引いていることに気がついたのは、毎日のように一緒に入っている浴室の窓であった。
それはゆっちゅは水泳教室に行きはじめた時期とも重なる。
ママの話によると、プールがある施設内の色々なものにゆっちゅが関心を示していたらしい。しかし、指導員がそうと気づかず、不審に思っていたという。
ゆっちゅは新しい環境に置かれ、周りにあるものに大いなる興味関心を持ったらしい。
今も、風呂場の窓には大いに関心を持っている。そして、それに加えて扉の確認が始まった。
ジィの家からさんぽに出るとき、玄関のドアと門扉をゆび指して、名前を確認する。
ドアや門扉が開いてから、じぶんがそこを通って、大好きな外に出られることがわかるのだろう。
外に出て、外から見た家々の窓やドアや雨戸や網戸や戸袋やヨシズ、そして壁面などの名前を、盛んに確認する。
内と外が、窓やドアによって存在することに気がついたにちがいない。
最近、ゆっちゅは湯船でお湯と戯れるようになった。手や足を使ってお湯を叩いたり蹴ったりしておもしろがるようになった。
スイミング・スクールでも楽しそうに、水に親しんでいる様子らしい。
ゆっちゅは水やお湯に浸かったり、そこから出たりする経験をして、入ることと出ることを体験的に理解するようになったと考えられる。
水という液体であったことが、出入の感覚を持つことを可能にし、内と外という客観的な構造の認識へとつながったと言えないだろうか。
ゆっちゅの驚くべき身体能力の進展と自己の身体認識の高まりを見ていると、つくづく男の子は、運動神経の発達が自分の置かれた外的環境を理解するうえで大きく影響しているのがわかる。
昨夜、ゆっちゅを抱っこして歩いていたら、前後の脈絡もなく突然「イチ ニー サン シー ゴー」と、ゆっちゅがつぶやいた。
それから、家までママとジィとゆっちゅの合唱が続いた。