複合語

日曜日、ゆっちゅと久しぶりに電車に乗った。ホームで電車を待つわずかな時間、入線する電車や通過する電車に「エッシャー」と大声をあげて騒ぐゆっちゅの声に、電車を待つ大勢の乗客から注がれる視線を受けながら、電車に乗り込む。

車窓から見える電柱や電線、さまざまな柱の類い、橋や高架橋、畑や田んぼ、松並木、電車と並行して走る大型車や小型車など、ゆっちゅは見知っているものを見つけるやいなや、知っている限りの言葉を発する。

 

このところのゆっちゅの関心は、「アシ」「くるくる」「イチ、ニー、サン、シー、ゴー」の3つの言葉に集約される。

 

ゆっちゅは車内のつり革をゆび指して「くるくるダー」とやる。

ゆっちゅには、丸いもの、輪っか状のものは、「くるくる」である。

じぶんでくるくる回るとき、「くるくる」と声をあげながら体を回転させるようになってから以降、ゆっちゅの「くるくる」は、動くものを表す言葉になっているようだ。

自転車の車輪が回るのを見て、「くるくる」と最近言うようになった。

その「くるくる」に、「ダー」や「シー」が付いた「くるくるダー」や「シーくるくる」といった二語から成る言葉を使いはじめた。

 

また、じぶんで階段を上り下りする時と、選挙用ポスター掲示板の番号をゆび指してに、「イチ、ニー、サン、シー、ゴー」と声を発する。

初めは、風呂の中でジィが指を折りながら教えていたものだが、その後、抱っこしての階段の上り下りの際にも号令をかけていた。

じぶんの身体を動かして階段を上ることに合わせて、一拍一拍、「イチ、ニー、サン、シー、ゴー」と声を出すことは、拍を刻むことで連続するものを一つ一つ分節していることになり、しかも、一つ一つ異なる音に対応させている。

「イチ、ニー、サン、シー、ゴー」と異なる音と、数字はまだ理解できなくても、ポスター掲示板の黒い線で四角く区切られている中の数字の「12345789…」という異なる形のものとの間に一対一の対応が取れているということになるだろう。

 

さて、ゆっちゅの「アシ」だが、じぶんの足、橋げたの「足」、家の柱や門柱、電柱、街灯の支柱の「柱」に、ゆっちゅは共通するものを見ているように思われる。

だから「アシ」一つで、ゆっちゅとは話が通じているような気がする。

地面の上に立ち、何かを支えるものが、「アシ」なのだ。そして、ゆっちゅの中では、それは「イシ」すなわち「石」ともつながっているのだ。