ワイルドライフ

小春日和で風もなく、前日の強風と雨のせいで「帽子山」は透明感抜群だった。

玄関を出て、帽子山を見るとすかさずゆっちゅが「ぼうしやま きれい」と反応した。

さんぽコースは、いつもと違って川に出る道を指示してきた。

土手道をしばらく進むと、逡巡していたゆっちゅは意を決して川原に降りるといい出した。

そこを下りたら、藪漕ぎになるのが避けられないところだ。

ゆっちゅは、どうもそれを望んでいるようだった。

近ごろ悪路を好んでよく歩く兆候がある。

川原は草刈りが終わった後だったが、それでも草はゆっちゅの腰くらいはある。

ゆっちゅは草を蹴散らして勢い良く歩き出した。

気づくとアメリカセンダングサというらしいが、俗称「ひっつき虫」とか呼ばれる、子供がよく服に付け合って遊ぶ草のタネが群生するなかを勇ましく行進して行くではないか。

追いかけてゆっちゅの衣服を見ると、クワガタのツノをつけたような小さなタネが無数に突き刺さっている。

ジィが取り除こうと悪戦苦闘するのを尻目に、靴のなかにも入り込んだらしく、ゆっちゅは靴を脱がせろと足をバタつかせる始末、さんざんな思いをして、概ね取り除いてふたたび散歩を続行すると、今度はもう一段下の川底だったところに降りるといい出した。

そこは、10月の雨台風で、上流から押し流された大量の大小様々な石で川底が隆起し、所どころ深くえぐり取られたところが水たまりになって残っていた。

かろうじて流されずにとどまったアシやヨシズはなぎ倒されて、そのまま枯れ果てていた。

それにしてもゆっちゅの身の丈を越える草のなか、足元は石だらけのうえをバランスをとりつつ歩き、大きな石と取っ組み合ったりよじ登って上に立ち「たっかぁい」と言って得意げな顔を見るとつくづくたくましく育っていると感じる。

終わりには、河川敷に降りる石段が20段ほどある高さの土手、傾斜角は35度はあろうかという斜面を、はじめて自力で手をつかず登ることもできた。

今日のさんぽはワイルドだった。