言葉の抑揚

「ガス  ボン  ベー」は、ゆっちゅのガスポンベの言いである。

「ガス」と「ボン」と「べー」の間にそれぞれひと呼吸間を取り、そして「ガス」より「ボン」が強く「べー」は「ボン」よりさらに強く強調される。

さんぽ中に家々のガスポンベを見つけると、得意げに唱える。

そのこだわり方は、「でんちゅー(電柱)」以来だ。

もちろんゆっちゅの中では、ガスポンベとガスレンジでの煮炊きや風呂のお湯とのつながりは理解しているはずだ。

肝腎なのは、「でんちゅー」と「ガス ボン べー」の言い方の違いである。

どこの家にもガスポンベがあり、ガスポンベがあるということは、同じようにガスレンジで煮炊きし温かい風呂に入ることも了解しているに違いない。

これもゆっちゅにとっては、「同じ形」であるに違いない。

「ガス ボン べー」の言い方は、そう言うとジィに「受け」ることを確信している。

そして、自分でも「受け」ているのだ。

そんなときは興奮して、よくジィの頰をたたいたり、ジィの顔を両手で挟んで自分の顔をジィの顔に打ちつけてきたりする。

ボディ・ランゲージがともなうのだ。

ゆっちゅはアナログなコミュニケーションを、実に豊かに発信かつ受信している。