再び外遊へ

ゆっちゅが再び外遊に出だした。

「お砂」遊び道具一式をもってアパートのアーチをくぐって、以前の散歩コースの道に足を踏み出した。

「お砂」遊びとは、ゆっちゅの住むアパートの部屋が一階の東側の端にあり、その外壁に沿って二坪ほどの三角形をした砂利を敷きつめた敷地があり、そこで遊ぶのを指して言う。

遊び道具は、バケツやシャベル、熊手、ザル、三角コーンなどのお馴染みのお砂場セットと、20cm大のプラスチック製のダンプカーとコンクリートミキサー車とショベルカーである。

家にこもりがちだったゆっちゅの遊び方を外に向かうように仕向けてくれたのが、あのユズとハルの出現だったのだが、その出会いの場所がお砂遊びの三角の砂利の敷地だ。

日本の近代化が西欧世界に触発されて他律的に始まっていったように、ゆっちゅはその三角地でユズとハルの襲来によって遊びの先端技術を目の当たりにした。

それ以来ゆっちゅはふたりを待ちわび、新たな刺激を待ち望むようになった。

ところが、このところそのふたりが一向にその姿を見せない。

ゆっちゅのお砂遊びもしだいに精彩を欠くようになり、ユズとハルのアクロバティックな遊びを真似るかのようにアパートの庭の植え込みの土を止めるための幅10cmほどの曲がりくねったコンクリートブロックの上をジィにつかまりながらも走ろうとしたりもするのだが、ゆっちゅの心を長く引きつけることはできない。

しかし、ふたりが与えた衝撃によってゆっちゅの気持ちを外に向いたことは間違い。

それ以降ゆっちゅに「お砂に行こう」と誘うと、躊躇なく外に繰り出すようになった。

それなのに待て暮らせど現れないユズとハルにとうとうしびれを切らしたのか、道具一式をもってゆっちゅは遠征を企だてたのであった。