再び外遊へ

ゆっちゅの気持ちは、再び外遊へと向かい出した。

トンネルを通って山のふところに入った。

ゆっちゅの心を突き動かすものが強かったのだろう、自分から歩いてトンネルに入っていった。

山の上り下りの坂道もしばらくぶりのことで刺激的だったのだろう、足取りも力強く駆け上がり駆け下りた。

そして、目に見えるもの耳に聞こえるものを即言葉にして行く。

ゆっちゅは一年の間に経験して知っている全てのものを一つも残さず言葉にしようとしていた。

久しぶりに訪れた山は五月の新緑につつまれていた、そして、ゆっちゅの周囲は湧き出す言葉であふれていた。

 

ゆっちゅに家に引きこもる傾向があらわれたころ、ミニカーが箱に入っていることに強いこだわりを見せるようになった。

また、大型のごみ収集車のオモチャにいろいろな小物を入れる遊びに夢中になったりもした。

砂や石をタンクローリ車に入れたりブルドーザーですくってダンプカーに載せたり、いずれもユーチューブを見てまねをするようになったようだが、中に何かを入れることができる器状のものに関心を持って、どんなものにどんなものが入るか試そうとするようになった。

あるとき、指が入る程度の穴に関心を示したので「穴っぽ」という言葉を教えたら、指を突っ込んでは「あなっぽ あなっぽ」とうれしそうにわざわざ確認をとるようにジィの顔をのぞきこんだりした。

自分の着ている服にポケットがあることにも関心を持つようになったので「ポケット」と言うんだよと教えると、すぐにマスターしようと「こぺっと こぺっと」とポケットに手をつっこんで喜んで飛び跳ねていたこともあった。

 

そしてこの頃、ばあばと二人でゆっちゅを散歩に連れ出しに行くのだが、ばあばが一緒だとゆっちゅは積極的に誘いに応じ元気に外へ飛び出してくる。

三人で歩いていると、ゆっちゅは同じ話題を取り上げて会話しようとしているような言葉遣いをする。

散歩の終わりには、以前よくしたようにジィの漕ぐ自転車に乗っかってのサイクリングの誘いにも応じるようになった。

ゆっちゅが引きこもりの傾向を見せる前によく走ったコースを行く。

その頃の記憶も戻ってくるのだろうか、五月の風を顔に受けながらゆっちゅのおしゃべりの速度も上がってきて、口からは多彩な言葉が後をついて出てくる。

ペダルを漕ぎながらそれを聞いていると、わずかな間に実に豊かな経験をし着実に学習をしていることが伝わってきて感動を覚える。