五月のバラ

ゆっちゅの下半身に安定感が見られるようになり、巧みな足技を身につけ始めた。

ひとりで両足ジャンプをしたり、両手を吊り上げてもらってジャンプしたり、両手をつかんでもらった状態で後ろにそっくり返ってジィの股の間から後方を逆さに見るなど、自分の身体をどのくらい自由に動かすことができるのかを確かめながら身体の可動領域を広めようとしている感じだ。

 

サッカーボールでは、小刻みにボールを蹴りドリブルらしいことをするようになった。

そして、ときどきボールを蹴るときにボールを見ずにわざと横や後方に顔を向けて蹴る。

どこにボールがあるのか自分にはわかっているんだというようなポーズを見せる。

近ごろ香川真司のビデオを好んで見ているという話を聞いてからは、ゆっちゅのボールを扱う仕草がなんとなく香川選手に似ているようにも思う。

ゆっちゅのコピー能力は大したものだと感心する。

 

ゆっちゅの走り方を見ていると、膝の位置が上がってきて本格的なものに近づいてきた。

下り坂では両足が宙に浮いている状態、すなわち走っている状態を取ることができるようになった。

また、上り坂では、後ろ向きで歩いて上がりながら、それができることが誇らしいのか得意げに笑いかけてくる。

 

ゆっちゅの身体操作の自在性が増すに応じてゆっちゅは言語活動も活発になり、そして顔にはゆっちゅ固有の感受性豊かな表情が現れてきた。

五月のバラの蕾がほころぶように、ゆっちゅの個性がその姿を見せはじめた。