すわるとおりる

ゆっちゅは「すわる」という言葉を「椅子に座っていて、こっちに来ないで」という意味でつかう。

また、「あっち行くよ」は「あっちへ行って、こっちに来ないで」という意味でつかっている。

これらの言葉は、ゆっちゅが自分のテリトリーを意識していることをものがたっている。

「おりる」という言葉を「こっちにきて座れ」という意味でつかっていたので、そういうときは「すわる」と言うんだよと教えると、次のときにちゃんと「すわる」と言うようになっていた。

 

カンナちゃんと遊ぶようになってから、ゆっちゅは二人でいっしょに遊ぶことをおぼえたようだ。

それにともなってか、相手に指示をだす言葉をつかうようになってきた。

相手をじぶんの思うように動かすことが面白いことに気づいたものと見えて、散歩の際にも、ジィに注文をだしてくるようになった。

 

その日は、いつもゆく遊具は滑り台が一つあるだけの小さな遊園地にいった。

前日も滑り台遊びをしたのだが、ゆっちゅは滑り台遊びに開眼したかのように階段を上がっては三つある台を交互に滑り下り、連続して20回ほど一人で滑って遊んだ。

しかし、その日は一人で滑るのは早々にやめて、ジィも一緒に滑れといってきかなかった。

2、3回いうことをきいて滑ったが「ジィジはもう滑らない」と言うと、今度は滑り台の周囲をぐるぐる走り回ろうと遊びを変えてきた。

「ヨーイ」とかけ声をかけて走る構えをし、ジィも構えるのを待って構えたのを確認すると「ドン」と言って駆けだす。

ときどきジィが走っているかどうか振り返って確認してくる。

走っているとわかると「エンジンジン エンジンジン」と走りに拍車がかかってくる。

途中で立ち止まったゆっちゅが何をするのかと思いきや石を拾ってジィに手渡してくる。

そういえば、前日に石をバトンがわりにして走ることを教えたことを思いだした。

それを思い出したゆっちゅはさっそくじぶんから遊びに取り入れてきたというわけである。

こどもは遊びの天才だ、いや、学びは「まねぶ」すなわち「まねをする」に由来すると言われるが、遊びの本質はまことに学びにあると痛感する。

しかもそれは身体全体をつかった学びである。

身体機能の向上は、言葉の習得に反映するということが、ゆっちゅを見ているとよくわかる。

ゆっちゅの走りは、片脚に完全に体重をのせて力強く蹴りだすことができるようになって自信がついたみたいで、しかもたのしくてしかたがないと言わんばかりの学びの化身のような走りだ。

つぎにゆっちゅの口からどんな言葉が飛び出してくるか楽しみだ。