三角形が北を指す
ゆっちゅは風に反応する。
「あっ風がふいてきたね」
風速計をみて「南南東の風だね」などとジィが言った言葉をまねて言ったりする。
そこで「東西南北」の方角を教えようと思いたってコンパスをもちだして見せた。
小さなもので北を示す文字のうえに三角形がついていて文字盤ごと動いて北を示すつくりになっている。
ゆっちゅは三角のかたちはわかるので「三角形が指すのが北だよ」と言って二階にあがる階段を指さす。
「そして逆のこっちが南だ」と言ってピアノがある方を指さす。
玄関の方を指さして「あっちが東だ」そして、ばあばが座っている方を指さして「あっちが西だ」
するとすかさずゆっちゅはガラス戸越しに見える庭を指して「あっちは?」ときいてくる。
「こっちが南で、ばあばがいる方が西だから南西だ」
散歩に行くときももっていって、いつもの遊園地で滑り台のしたでコンパスをだして「三角が北を指している。あっちが北だ」と言うと、ゆっちゅがつかさず「こっちは?」ときいてくる。
「そっちは南だ。それでこっちが東で、こっちが西だ」とジィが指さす。
するとゆっちゅは「こっちは?」と入り口を指さす。
「南西だな」とジィ。
先日、本屋に立ち寄った折に昔ながらの針が北を指して文字盤をそれに合わせる式のコンパスを見つけて買ってきて見せたところ、ゆっちゅはすぐ興味を示した。
今では二つのコンパスを必ず持って散歩に行く。
ゆっちゅはコンパスを「三角の」とよんで、コンパスという言葉はつかわない。
ゆっちゅの求めに応じてその場で東西南北を確認する。
はたしてゆっちゅは方角をどのように利用するのであろう。