意識の王国

ヒトを細胞という視点からみると、ヒトは自然な存在である。

しかし、人の意識が形成されるやいなや人の自然状態からの離脱がはじまる。

 

オシッコやウンチは自然の摂理であり、おなかが空けば不機嫌になるし、眠くなったら意識は散漫になる。

細胞の活動は生理現象であり、そのすべては自然現象である。

そこに大人と幼児に区別はない。

違いがあるようにみえるのは、意識の介入の程度が異なり、時と場所と状況に応じた生活様式をとれるかどうかの違いにすぎない。

大人になればトイレで用を足せるし、腹が空けばコンビニへいってパンを買って食べることもできる、そして居眠りして仕事に支障をきたさないように規則正しい生活習慣をこころがけるようにもなる。

大人は自分の生理現象をうまく手なずけることができているからいちいち意識しないだけのことで、けっしてみずからの生命活動を自由自在にコントロールしているというわけではないのである。

 

なにはともあれ、意識の王国を形成することによって人は自然状態から遊離するのだが、その離脱の仕方は人それぞれで、そこでその人の生涯にわたる生き方のスタイルの元型が形づくられるとかんがえられる。

それが、いわゆる「三つ子の魂」である。

自然状態からの離脱の仕方が人の個性と関係するというなら、人間特有の巨大化した大脳皮質の機能である意識作用と言語の役割をみてゆくのが得策であろう。