ユッケへおくる言葉④
「噛むと美味しい」
ごはんの時やおやつの時、物を食べながらユッケはそんな言葉を言うようになった。
ユッケは幼稚園では昼に出される給食をほとんど食べないらしい。
ヨーグルトや焼ソバなど食べ慣れたものが出たときは食べてくるようだが、お腹は一杯にはなっていないだろう。
ユッケの食事はまだ、離乳食の延長上にあり、歳の割には少食なようだ。
それでも、ユッケは活動量の面から見ても、同年代の子どもと比べて遜色なく、むしろ活発な方だと思う。
だからユッケは太らないのだろうし、ユッケの体はかなり燃費がいいと言えよう。
決して食が細いわけでもなく、食べ慣れていないものはなかなか口にしない傾向は必ずしも悪いこととは言えないが、もう少し大人の食べ物も食べてほしいと思い、「よく噛んで食べると美味しいよ」と食事の際にはたびたび語りかけ、噛む仕草をしてみせた。
やがて噛むことを意識するようにはなったが、相変わらず食べ慣れていないものには用心深い。
近ごろ新規に食べるようになったものは、いちごのポッキーだ。
「噛むと美味しい」と言って食べる。
幸いユッケは虫歯がない。
今夫婦で歯科医をなさっているところに通って、フッソで歯をコーティングしたり奥歯が虫歯にならないような薬を塗って予防をする治療を受けている。
二歳児検診で大暴れしてママや先生を困らせていた頃とは打って変わって、言うことを聞いておとなしくしているらしい。
とうとう最後の治療の日にユッケは眠気に勝てず、奥さん歯科医の腕の中で眠り出してしまったらしい。
幼児の治療では定評のある先生が「これは大物だ」と呆れていらっしゃったと言う。
丈夫な歯をもつことと人を信じることは、生きていく上での基本的な資質だ。
ユッケはいいものを持っている。