アリを数える

水曜日のことである。

 

例によって、踏切に行ってから、新築中の家を見に行った。

「アシ いっぱい イチ ニ サン シ ゴ」と興奮して叫ぶ。

「イチ ニ サン シ ゴ」は、一つ一つが別であること、すなわち個体性を認識する作業であり、「いっぱい」は、個の集合体、同じ種類のものを一つにまとめる作業をしているのではないだろうか、と思い至った。

空き地に行くと、アリを見つけて「アリが、いっぱい イチ ニ サン シ ゴ」と声を上げる。

アリが4、5匹いるのを見つけたゆっちゅは、同じアリという、黒くて小さい、動くものを一つ一つ数え上げていた。

同一種の個体を個別的に数え上げる、というより読み上げていたと言っていいだろう。

 

稲刈りが終わった田んぼに行った。

初めて足を踏み入れたゆっちゅは、水が無くなって乾き始めた柔らかい土の感触を楽しむかのように、何度も四股を踏んでいた。

藁を拾って遊んでいるゆっちゅに、カエルとカメムシを紹介してやった。

カエルは顔なじみだが、カメムシは初対面だろう。

ジィがカメムシを藁でつついたら、その藁にカメムシがつかまってきたのを、ゆっちゅも藁でつついて喜んでいた。

帰りがけに、踏切の遮断機が降りる音を聞きつけ、電車が来るのがわかったようで、電車を待っていたら、青い特急電車がやって来たから、ゆっちゅは大騒ぎをする。

「あおい でんしゃ、あおい でんしゃ」

青い電車は、あっという間に通り過ぎた。

「あおい でんしゃ いった」とゆっちゅの3語文が出た。