言葉を使う

さんぽコースを固定してから、点と線だったさんぽが、移動中は抱っこでナンバープレートの文字と数字の読み聞かせとゆっちゅが盛んに話しかけてくるようになったので、その相づちを打つのに忙しくなった。

ゆっちゅが抱っこから降りて遊ぶ場所が、点から面になり、滞在時間が長くなった。

 

朝のさんぽで、踏切に行こうかと誘うと「カンカンカン」と応えるようになった。もちろん遮断機を想っての言葉だろう。

また、踏切から場所を移動しようと「お家見に行こうか」と言うと「アシ いっぱい」と応えた。

建築中の家の柱は見えなくなり、足場を組んだ鉄パイプを言っているのだ。

踏切からは、新築の家は見えない。

これから行こうとしている場所に関して会話ができるようになった証しだ。

 

建築中の家にドアが取り付けられ、それを「ドォア」と言うようになり、壁に覆われ柱は見えなくなったが、替わりに「カベ」と言うようになった。

 

電柱を指して「でぇんちゅ」と言うようにもなった。

 

クルマのナンバープレートの「す」「ぬ」「め」「む」数字では「3」「6」などは読むようになった。

 

木では柿を目ざとくみつけ「カキ」と言って、1から10までの数を言って「いっぱい」と言う。

 

白い風車を「しろい クルクル」、遊園地の滑り台の青く塗られた鉄柱とプラスチック製の壁を触って「あおい はしら」「あかい かべ」と呼ぶようになった。

 

夕方、お絵描きをしていたら、ゆっちゅが「テッチョ、テッチョ」と言って、部屋の扉を開けて玄関に向かう。

ついて行くと、玄関のドアをゆび指して「テッチョ、テッチョ」と言う。

ジィには、ゆっちゅがティッシュティッシュと言っていると思い込んでしまったので、ゆっちゅが何をしたいのか皆目見当がつかなかった。

2、3回そんなことを繰り返しているうちに、

お絵描きしていたカレンダーに、山間の鉄橋を渡る電車の写真が写っていて、数字を読み聞かせている時「電車が鉄橋を渡っているね」と言ったことで、ゆっちゅのハートに火がついてしまったことに気がついた。

ゆっちゅも言葉を使いこなすようになったかと、感慨もひとしおだった。

もちろん、ゆっちゅを連れて鉄橋を渡る電車を見に行った。

そして日が暮れて暗くなるまで、ゆっちゅは送電線の火花を散らして走る電車に見入っていた。

「カエルが鳴くから帰えーろ、ケロケロケロ」と歌うと、ゆっちゅも「かーえろ」とつられて口ずさんだ。