集団行動

ゆっちゅの近頃のお気に入りの遊びは、みんなを引き連れて、二階の和室と隣の洋間を「院長回診」よろしく、儀式的に巡回して回ることだ。

全員を、一階の部屋から一人ひとり手を取って誘い出し、最後に必ず自分で一階の扉を閉める。

階段を登るときは、まず階段の電気を点けるように指示を出す。

ジィに自分の手を取るように差し出し、皆が付いてきているか、振り返り振り返り、登って行く。

ひとりでも付いて来ないものがいると、癇癪を起こす。

階段を登り終えると、まず和室の扉を開けて、電気を点すように指示をする。

室内の布団でひとしきり皆で遊ぶ。

そして、頃合いを見計らって、窓を開けるように求め、外の空気を感じてから換気扇とエアコンを作動させるように指示を出して、両手を掲げて風を感じては「かぜ かぜ」とか「暑っち」と言って喜びを露わにする。

続いて、隣の部屋へ移動するときも、先頭はゆっちゅだ。

入ると、手回しで開閉する窓を、開けることは自分ではまだできないので、ジィに開けさせる。

そして、外の風を感じて「暑っち」とか「寒み」と言って、窓を閉めることはできるので自分で回して閉める。

多いときは10回近く繰り返してやることもある。

それから、電気スタンドのスイッチを入れては消して「ついた きれた」と言いながら、何度かやる。

そのあと、気が向くとベランダに出る。

備え付けのサンダルを履いて、硝子戸や網戸、雨戸、戸袋などを、触って名称の確認をする。

「院長回診」風遊びの終了の儀式は、窓の戸締り、エアコンや電気の消灯の確認である。

一つ一つゆび指して「オッケー」と言って確かめてから一階へと降りる。

 

しかし、これらの一連のゆっちゅの行動は、それまではジィと二人でやってきたことなのであった。

それをみんなと一緒になってするということなのだが、ゆっちゅはなぜ、何がきっかけでこんなことを思いついたのであろう。

それは知る由もない。