思い出

ゆっちゅのジィは、無職です。だから、さんぽは、だいじな任務です。でも、いっしょにいるとおもしろいことを発見します。

はじめは、風にふかれるのをよろこんでいました。夏が近づくころですから、ゆっちゅはまだ1才になる前です。

近くの大きな橋の下に、だっこでよく連れ出しました。橋の下は、よく風が起こるのです。ゆっちゅは顔に風が当たると、奇声を発してからだを躍らせました。

川面に光が反射したり、風に揺れる木の葉が光を受けてきらめく様に魅入っていました。

風を当たりに行くとよく椅子がわりに坐る石があります。 あるとき、そのうえに素足で立たせてみたら、踏ん張って自分で立とうとしました。

それ以来、面白がって、支えてジャンピングをさせるように催促するようになりました。ゆっちゅの運動神経に火がついてしまいました。

ジィの腹筋の強化が急務となりました。

それは、ひとり歩きができるまで続きました。

任務は、やはりたいへんなもののようです。

しかし、ゆっちゅの風を感じている表情や、水面の光のきらめきや木の葉のうえでひかりたちが遊びまわって様子をジッと見つめるゆっちゅの顔を見ていると、ほんとうの美しさというものを感じとっているんだろうなと思いジィは嬉しくなりました。