「イシ」「アシ」「ハシ」
ゆっちゅが石と会ったのは、河原の石が最初だろう。
ゆっちゅが石を好きなのは、じぶんの投げた石が水音を立て、川面に波紋をつくるのを見たからだろう。
石投げしたいと、川の方をゆび指して「イシ」と、意思を表す。
道祖神や堅牢地神や石仏に触らせて、「イシ」と教えてから、それに触って祈る仕草をすることと併せて「イシ」とも呼んでいるところを見ると、それらが神さまでもあり、河原の石との素材の共通性もわかっているようだ。
また、ブロック塀や石段や道路などコンクリートでできたものも、触らせて「イシ」と呼んで教えた。
しかし、自然石とコンクリートとの違いは感じているのではないかと思われるが、定かではない。
それはさて置き、橋の橋脚を触って、それを「イシ」と呼ぶようになったということは、少なくとも「イシ」は形や大きさには関わらない、何か共通する性質を指しているのだろう。
そして、最近になって教えた電柱にはいたくご執心で、ゆっちゅの関心たるや尋常ではない。
電柱も触らせて「デンチュウ」と教えた。
その電柱はコンクリートでできているから、ゆっちゅにとっては「イシ」でもある。でも、「イシ」とは呼ばない。
電柱を見るたび、ゆっちゅはゆび指して「コレ」と言って「デンチュウ」という音声言語を要求する。そして、触りたがる。
さらに、電線の存在にも気がつくようになって、それをゆび指して「デンセン」という音声言語も求めるようになった。
これと並行するように、ジィの股くぐりをおもしろがったり、じぶんの足をゆび指して「アシ」と言うようにもなり、それと相前後するように、橋を指して「ハシ」と言うようになった。
さんぽコースには、鉄橋をはじめ大小いくつもの橋があり、そのうちの4つの橋を、ゆび指して「ハシ」と呼名した。
どういうものを橋というのか、わかったようだ。その中には、鉄パイプを組んで板を渡した橋もある。
電柱の側には、夜間照明の街灯とカーブ・ミラーの支柱がいっしょに立っていることが多く、傍らを通るたびに、ゆっちゅはよく撫でたり叩いて音をさせたりして、違いや共通点を確かめているようであった。
プールサイドのあずまやのような露出した柱に興味を示していたことも、橋を理解することと関連があるように思われる。
どれも、柱の上には、何かが載っかっている点で共通するから。