「よーい ドン」

駆けっこのフォームが進化した。

地面に着いたときの片脚で立っている時間が延び、その分宙に浮いた方の足の滞空時間も延びて前方に弧を描いて踏み出して走るようになった。

そのせいか、ゆっちゅは走るのがますます楽しくなったと見えて、突然走り出すことが増えた。

そのため、さんぽ中は車の往来とゆっちゅの足場を確認するのでかなり神経を使う。

とくに、スピード感を楽しんで下り坂を走るときはハラハラする。

DVDで新幹線が走る映像を見て「はやーい」と言ったり、自転車に乗せて坂道を下るときに「びゅーん」と言ったりしてはしゃぐのと関係しているようなのだが、元はと言えばジィが蒔いた種なのだ。

ゆっちゅの下り疾走はさんぽのときの悩みの種になっている。

はじめは、心配で「走っちゃダメ」と思わず注意を与えていたが、ゆっちゅは怒って泣き出したり、そっくり返って暴れるので、なるべく手をつかんでいっしょに走るだが、「よーい 」とゆっちゅがかけ声をあげ構えたときは競争しようということなので、手をつなぐのを拒否する。

そうこうしているうちに「ドン」と発声して、ゆっちゅは飛びだして行く。

後を追うジィ。