文字を読む

水曜日の朝のさんぽは、歩いている人もあまりなく、新築の家の壁に釘を打ち付ける音が、乾いた空気を伝ってきていた。

閑静な住宅街の道を歩きながら、例によって車のナンバープレートを読みあげながら歩いていると、突然「ハ」と声がして、ゆっちゅが平仮名の「は」を読んだことが分かった。

ナンバープレートの「は」が読めるようになったゆっちゅは、そのあとも何台かのプレートの「は」は読むことができた。

 

その日の夕方にジィの家に来たとき、紙に「は」と書いたものは、読まなかった。ナンバープレートの「は」は、数字と一緒にあるから「は」なのかも知れない。

 

さんぽの終わりに家に戻ってきたとき、アパートを囲っている塀にかかっている、空き部屋の案内をした看板の「い」の文字も読んだ。

その「い」もきっと、その看板と一緒にあるものだったのだろう。

やはり「い」も、紙に書いたものは読まなかった。