自転車の研究

ゆっちゅが自転車の仕組みに興味を示した。 はじめはベルや変速ギアのスイッチであった。 続いてペダルをこぐジィの太ももに関心が移っていった。 その日は自転車に乗るのを拒否して土いじりをし出した。 ゆっちゅがサイクリングに使う自転車はジィの家の庭…

さんぽコース

ゆっちゅと日々生活を共にしていると、ひとが成長するには実に長い時間が過ぎ去る必要があることが実感される。 まさしく悠久の時の流れのなかで生きて、巧まず焦ることもなく自然のままに過ごしているゆっちゅの「生」にふれるからだろう。 ゆっちゅは、自…

「おなじ かたち」

ミニカーの都営バスやJRバス、消防車、乗用車などを二つ以上並べてそう言ったり、ミニカーが入っていた箱と見比べて「おなじ かたち」と言う。 後者の使い方は適切だが、前者については間違っているように思うのだが、「かたち」という言葉はゆっちゅにとっ…

砂山

原子は渦巻きの姿をしているとも考えられるという。 絡まりあって原子は分子を作り、さらに高次のつながりを持ち、あらゆる物が形づくられて行く。 また、動植物は物質が通過して行くシステムだという。 システムにおいては、構成されている一部分に情報が入…

知る

生をうけてゆっちゅが最初に感じたものは母の胎内で奏でられていたリズムであろう。 地球が自転し、昼と夜が交替する明暗のリズム、四季が織りなす色彩のリズム、自然界や人間生活の音など世界はリズムとしてひとつのものとして、ゆっちゅに語りかけてきたに…

郵便車のマークがついてる

ミニカーの郵便車にマークが付いているのを、大好きな叔母ちゃんに教えてもらったゆっちゅは、口まねで「ゆうびんしゃのマークがついてる」。 すかさず傍らにあった、ゆっちゅの大好きなごみ収集車をさして、叔母ちゃんが「清掃車のマークがついてる」と。 …

もっと高く

山に入った日、ジィのジョギングコースを走るゆっちゅの姿は印象的だった。 傾斜角30度ほどののぼり坂に向かって、手と足を交互に構え腰を落として、ジィを振り返り「よーい」の号令がかかった。 すかさず「ドン」と言って駆けだすゆっちゅの後ろからつい…

山登り

踏切を越えると、正面に隧道のひとつが見える。 「トンネル」と、その日のゆっちゅは山に入る気満々だった。 トンネルは沢に沿ってできている。 暗がりはまだ怖いのか、トンネル内は抱っこである。 トンネルを抜けて明るい場所に出ると、地面に降り立って枯…

「よーい ドン」

駆けっこのフォームが進化した。 地面に着いたときの片脚で立っている時間が延び、その分宙に浮いた方の足の滞空時間も延びて前方に弧を描いて踏み出して走るようになった。 そのせいか、ゆっちゅは走るのがますます楽しくなったと見えて、突然走り出すこと…

「行ってみようか」

「行ってみよう」「やってみよう」「開けてみよう」 今「・・・してみよう」がゆっちゅのブームになっている。 ミニカーの入っていた箱を手にとって、「開けてみよう」とか、その箱に入っていたミニカーをもって、「なかに入れてみよう」とかやっている。 自…

ワイルドライフ

小春日和で風もなく、前日の強風と雨のせいで「帽子山」は透明感抜群だった。 玄関を出て、帽子山を見るとすかさずゆっちゅが「ぼうしやま きれい」と反応した。 さんぽコースは、いつもと違って川に出る道を指示してきた。 土手道をしばらく進むと、逡巡し…

電気と水とガス

電気とガスと水に、ゆっちゅは関心を持っている。 近ごろ乾電池の中に電気があることがわかるようになった。 電柱から電線、そして夜の街灯の点灯が、電気によるものらしいと、ゆっちゅが想いはじめたのは、暗くなって街灯や家々に電灯の光りが灯るのを見て…

魔法の世界

二歳3ヶ月になったゆっちゅは、遊びのなかで寝転ぶことが目立ってきた。 階段の登り降りや荒れ地での歩行を見ていると、片脚で上半身のバランスを取るのが上手くなってきた。 プラレールやミニカーを、伏せって見ることで臨場感を味わうようになってから、…

「重た〜い」

じつは、さんぽに限らずゆっちゅを抱っこするのは、それほど苦痛ではない。 耳もとで言葉を交わすことができるからだ。 言葉がなくても、ゆっちゅが目をキラキラさせいるのを間近で見るのは楽しい。 広い意味で考えれば、それもコミュニケーションと言えると…

新年初さんぽ

ゆっちゅとの初さんぽは、3時間に及んだ。 その間、抱っこしたのは、暗渠にかかる鉄格子の端につまづいて転び泣いたときに少しだけで、あとはひとりで歩いた。 ジィが帰省していた間、ママと3時間さんぽして、自分で歩くよう厳しく指導されたようだ。 久し…

「Cars」を観る。

一週間ぶりに会うゆっちゅと、「Cars」という映画のDVDを見た。 主人公がレース・カーで、登場してくるのは、すべてクルマばかりの、クルマの世界の話だ。 若い主人公が初めてのレースで活躍して、すべては自分の力であり、一人でも十分にやっていけると天狗…

自我の成長

脳の神経細胞は、末梢神経を介して押し寄せてくる外界の差異の嵐を、言葉を使って同一化の原則に基づいて情報処理してゆく。 言葉を習得するに際しては、感覚受容と習慣の果たす役割が大きい。 複雑に結びついた脳神経網がシナプスの刈り込みによって整備が…

イヤイヤとコンテクスト横断

ゆっちゅのイヤイヤを見ていると、コンテクスト(文脈)の横断を試みているように思える。 さまざまなコンテクスト(文脈)を読み継なぐことができるのは、事物が自然界に属することからくる性質と、事物が人間世界で流通することで帯びる象徴的な意味も同時に担…

「ゆっけ」は「ゆっちゅ」

ジィの家のトイレの扉の横の壁に、一本の青いクレヨンで描いた線がある。 家のそこここに絵を描きまくった時期に、ゆっちゅが描いたものだ。 しばらく前から、その線をゆび指して「だれ かいた」と、ゆっちゅが言っていたことに、今になって気づいた。 そし…

強情っぱりなゆっちゅに、手こずるジィ

一昨々日のさんぽでゆっちゅは、今までになく長く激しく泣いて暴れた。 何が気に障ったのか、ジィには察しがつかなかった。 ここ数日ずっと続いている、ゆっちゅのお気に入りのコースを辿っていて、ジィがゆっちゅの求める何かをしなかったことが原因らしい…

コミュニケーションとダブルバインド

コミュニケーションは、コンテクスト(文脈)を前提として成立する。 単に言葉を話すというのでは、通り一遍の言葉の往来があるだけで、「意味」のある会話にはならない。 今自分がどのような状況に置かれていて、どのような行動を求められているかがわかるこ…

コンテクスト横断能力

ゆっちゅにとって、コンテクストは一定ではない。 水泳教室のときは、そこでやるべきことがあり、英語で遊ぼう教室のときは、そこでまたやるべきことがある。 ジィとのさんぽのときは、そのときでまたやることがある。 「やるべきこと」と言っても、まだ幼い…

第二次的学習

ゲームとは、勝負、または勝敗を決めることをいうが、そこには守るべきルールがある。 サッカーにおいては、手を使ってはいけないことのルールがあるし、バスケットボールでは、ボールを持って移動してよい歩数が定められている。 勝敗を競い合うスポーツは…

「反復学習」のコンテクスト〜言葉

今のゆっちゅにとっての反復学習の最たるものは、言葉である。 さんぽの前半は、ほぼ一定のコースをたどり、後半は、ゆっちゅの希望に沿って行くが、目下の興味は棒を使った土掘りみたいなことをしている。 どうも「中」の研究、内と外との違いを調べている…

「道具的回避」の学習コンテクスト〜行動

言葉は、人間にとって最も基本的な道具である。 言葉が分かるか否かは、人の行動に決定的な影響を及ぼす。 ゆっちゅはさんぽ中、交差点に差しかかると、立ち止まって車が来ないのを確認して「オッケー」と言ってから踏みだす。 また、道を歩いていて、車のエ…

「道具的報酬」の学習コンテクスト〜足

足は、ゆっちゅが手に次いで関心を持った身体部位だ。 足の意識を持ち始めると間もなく、ゆっちゅは電柱やカーブミラーの支柱、橋脚、門柱、家の柱を見ると「アシ」と盛んに呼称するようになった。 ゆっちゅの言う「アシ」は、いずれも上に何らかの物あって…

「道具的報酬」の学習コンテクスト〜手

道具は手の延長である。 TPO(時と場所と場合)をわきまえるという言葉がある。 それは、コンテクストを理解することと言い換えてもいい。 ここで言う「場所」は、結婚式とか卒業式といった「特別な行事、儀式」と考えよう。 ところで、ゆっちゅが道具を理解す…

「パブロフ的」コンテクスト〜光と音

風によって機能を、石によって実質を、橋によって構造を学んだゆっちゅだが、それよりも前に、ゆっちゅは、木の間を飛び歩く鳥のさえずりに耳をすませたり、木洩れ陽と新緑のダンスに目を輝かせたり、遠くの鉄橋を渡る電車の音に耳をそばだてたり、せせらぐ…

「パブロフ的」コンテクスト〜橋

ゆっちゅに知性の萌芽を感じたのは、橋脚を「アシ」と呼んだ時だった。 ゆっちゅの「踏み石」がある橋の下は、トンネル状になっていて、よく風が通り抜ける。 踏み石は、大きな橋の橋脚の一つが分厚いコンクリートの壁のようになっている側にあって、傍らを…

「パブロフ的」コンテクスト〜石

ゆっちゅにとって、石はどういう存在なのだろう。 さんぽしていて、ごく小さな石を見つけると、親指と人さし指の二本でつまみ上げては、それを左手に乗せて握りしめている。 大きめの石は、ジィにくれる。 たくさん石がある所では「これ、ちっちゃいね」「こ…